タイムスリップした感覚が好きです
主任研究員・整理業務課長
タイムスリップした感覚が好きです
整理業務課
芸術から考古へ。
整理業務課
芸術から考古へ。
自己紹介・入社まで
入社して3年目になります。大学では芸術教育学科で学んでいて、正直、考古学は未経験でした。先生にこちらを紹介していただいて見学に来たとき、ちょうど縄文土器の復元作業を拝見して、とても素敵だなと思ったのが入社の決め手です。ここに来て初めて、考古学の仕事や現場に触れましたが、毎日が新鮮で、学ぶことばかりです。
今の担当業務
主に土器の復元を担当しています。並行して、出土品の整理作業にも携わっています。復元で積み上げた感覚を、整理で構造的に理解し直す——その往復が自分の力になっていると実感しています。
復元のプロセス
まず、袋から破片を取り出して、同一個体のものを集めるところから始めます。接合の当たりを確認し、接着剤(セメダインC)で固定して形を立ち上げます。欠損部や穴は石膏で補って、強度と見え方を整えます。接合箇所はチョークでマーキングし、展開しながら組み合わせを検討します。地道ですが、ここでの判断が仕上がりを左右するので、丁寧に進めます。
難しさ・課題
復元は、立体の高難度パズルだと感じます。少しのズレが、全体の歪みにつながってしまいます。噛み合わせが合わないときは、角度や順序を変えて再挑戦します。
割れて埋もれていた器が、再び当時の姿に近づいていく——その瞬間に立ち会えるのが嬉しいです。誰かが考え、作り、使った“かたち”が戻ってくる。時間をまたいで人の手とつながる感じがして、自分の手で形にできることに大きな魅力を感じます。
この仕事の面白さ・やりがい
組み上がるほど形が見えてくるところが、本当に楽しいです。自分の手で一片ずつつないだ結果、最初は想像もできなかった器の姿が現れてくる。うまく決まったときの手応えと達成感は、この仕事ならではだと思います。
この仕事に就いてから、考古学への興味がどんどん深まりました。はじめは専門知識がなく不安もありましたが、破片と向き合い、先輩に教わり、少しずつ見えるものが増えていきました。手で考える時間が、私の学び方に合っているのだと思います。
縄文土器の文様を見ていると、制作のプロセスが想像できて楽しいです。縄をどう転がしたのか、押し当てたのか、どの順番で入れたのか——文様は作り手の手つきが残る“設計図”みたいだと感じます。好きな時代は、やはり縄文時代です。
未専攻でも働ける?
考古学を専攻していなくても、問題はありません。整理作業の中で、調査員の方が破片の段階から「この形になりますよ」とイメージを示してくれます。現場で見て、触って、学ぶことで、知識は自然と身についていきました。まずは興味があれば、しっかり伸びていける環境だと思います。
一番大切なのは興味です。技術はあとから積み重ねられます。復元は細部にこだわる仕事なので、手を動かして精度を上げていく“職人肌”の方は、特に向いていると思います。
今は整理作業も少しずつ学んでいます。時代によって整理の手法や着眼点が変わるので、その違いを理解し、状況に合った最適な方法を自分から提案できるようになりたいです。復元と整理の両輪で、もっと現場に貢献できる人になっていきます。